君を想えば

 

ベッドサイドのランプが室内を照らしている。

ゆらりと揺れる灯りをイタリアはぼんやりと見つめていた。

そっと、額に指先が触れるのを感じてドイツが滲んだ汗を拭いてくれたのに気付いた。

「平気か?」

向けられた声に目を開ければ、ドイツがまだ整わぬ息のまま、じっと見下ろしていた。

「・・ドイツ」

「少し、無茶をしすぎたか?」

本当に心配そうに。

眉根を寄せて聞かれた言葉に「大丈夫」とイタリアはかぶりを振った。

 

ただ・・なんだろう。

 

今まで、あんなに満たされていたのに、今はもう寂しい。

 

ドイツの首にかけられたままの十字架のネックレスが下に垂れて、イタリアの肌に少しだけ触れている。

その距離が悔しくて、イタリアは体を浮かして、ドイツに抱きついた。

 

ぴったりと隙間なく触れ合っていたい。

 

その衝動のまま、イタリアはドイツの口を塞ぐ。

積極的に舌を差し入れて深いキスを請えば、不安定な頭を支えるように手が添えられ、ぐいっと力強く押し付けられる。

「んっ・・っふ」

口の中全てを舐め尽すとばかりに口腔をまさぐられる。

歯列を一つ一つ辿り、上顎をつつかれたかと思えば、絡まれた舌を思いきり吸われて背筋にぞくりと震えが走った。

あまりにも激しいキスは唾液を飲む暇さえ与えてくれず、口の端から零れ落ちる。

「あっ、ん・・ふぅ、んぅ」

何度も何度も。

角度を変えて貪られて。

次第に意識は蕩けて、ひたすら体を駆け回る熱に溺れていく。

最後にじんと腫れぼった唇を食まれて、腰が痺れるのを感じた

「は、あ・・。ドイツ・・」

優しく寝かされる。汗を吸い込んだシーツは冷えてしまっていて、少しひんやりした。

「イタリア」

声が、目が、雄としての欲望を滲ませている。

何より、自分の内にいるドイツ自身は硬度を増して、火傷しそうな熱を伝えてくる。

求められることがこんなに嬉しいものだなんて知らなかった。

 

「やらしいの。さっきシたばっかり、なのに」

「お前が火をつけたんだろう」

「うん。だって、もっとって思ったから。もっとくっついていたい。もっと近くにいたい。もっとドイツを、感じたい」

 

溶け合って一つになれると錯覚するほどに。

 

「だから」

ゆっくりとイタリアはドイツに向かって両手を広げる。

「して?ドイツ・・」

 

答えはもういらなくて。

 

「・・・あっ、やっぁ・・あぁ、んっ・・ふ」

入口ギリギリまで引き抜かれ、また奥まで深く貫かれる。粘膜への激しい摩擦にぞくぞくと全身が甘く痺れ、体が歓喜するのが分かる。

あまりにも容赦ない抽挿に汗が吹き出し、嬌声が止まらない。

「んん・・あ、やぁ・・っあ」

ガクガクと揺さぶられ、強烈な快感が頭を麻痺させる。穿たれる度、脳天から足の先まで甘く痺れ、狂おしいほどの熱に翻弄される。

 

どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 

足りない、と自覚する。

もっと、と焦がれる。

ドイツが好きで、好きで、好きで。

 

「ドイツ、んぁ・・はっ、ドイ、ツ、ドイツ」

衝動に任せてドイツの名前を呼べば、大好きな優しい声が返ってくる。

「好き・・だ、よ。ドイツ・・好き・・」

汗で滑る背中を引き寄せたら、心臓の音が重なって聞こえるほど密着して、その甘さに泣きたいぐらいに安心する。

縋るようにしがみつくイタリアにドイツが微かに笑う気配がした。

「こら。そんなにくっついたら動けないだろう」

「ん・・」

 

― 離れたくない。この人と・・。

 

体をドイツに委ねれば、再び突き上げが始まった。動きは激しさを増し、いっそう体は熱でグズグズに溶けていく。

どこまでが自分でどこまでがドイツなのか、もう分からなくなって。

このまま一つになってしまえたら。そうしたら、ずっと失うことなくドイツの傍にいられるのだろうか。

そんな焦燥に駆られて、どうしようもなく胸が締め付けられた。

 

「・・あ、やぁ・・も・・」

「あぁ・・分かっている」

「は、あ・・っ、んん・・・っあぁぁあ・・・っ!」

 

訪れた絶頂感にイタリアは悲鳴をあげ、内部をぎゅっと締めつけた。そして低い呻きと共に、体内に熱いものが満ちていくのを感じる。

自分の中を支配していく感覚にイタリアは酔いしれた。

 

だけど、寂しさはやっぱり消えなくて。

 

甘い気怠さに体力は限界で眠気が襲う。

ぼんやりと霞んでいく意識の中、でも・・とイタリアは思った。

弛緩して倒れこんだドイツの重みに幸せを感じながら、イタリアはそのままゆっくりと眠りへと落ちて行った。

 

 

「好きって際限がないんだね」

「何を突然お前は言い出すんだ」

起きて、開口一番にそう呟いたイタリアにドイツは突っ込む。

体が清々しいのは、寝ている間に体をきれいにしてくれたおかげだろう。

シーツも新しいものに変わっている。

「だって少しでも離れるの、俺、嫌なんだよ」

ごろんとドイツの上に乗っかって、イタリアは手を顔のほうに伸ばして思い切り甘える。

「寂しくて寂しくて死んじゃいそう」

「そういう風には俺には見えんが?」

「だって俺、分かったから。あのねー・・・」

耳元で嬉しそうに囁いたイタリアは、ふわりと微笑って、そっと目を瞑る。

きっと自分のおねだりは、数秒も経たないうちに叶えられるはずだ。

優しく触れる感触を確かにイタリアは感じた・・・。

 

 

あなたを想って募るのなら、不安も寂しさも、辛くない。

だって、それは甘い、甘い、痛み。